ゴリラの鼻くそ
◆今日のお話の主題は、「リフレーミング」というカウンセリングの技法についてのお話をしたいのですが、まず、「ゴリラの鼻くそ」という話をしたいと思います。一体どんな関係があるのかは、後のお楽しみです。
◆今から約20年ほど前、鳥取県の人口三万人ほどの町にある酒屋さんが、息子が東京の大学に進学するので、なんとか、その資金を作ろうと、酒屋だけではもうからないので、奥さんの実家で作っている黒豆甘納豆でも、売ろうかと、多角経営に乗り出したのです。そして、その甘納豆に、「ゴリラの鼻くそ」と名前を付けて、各地の動物園や、遊園地のおみやげ売場に売り込んだところが、これが大ヒットして、10年程で、何と400万袋を売り上げたそうです。「ゴリラの鼻くそ」という名前で、大ヒットなんて、魔法にかけられたようなお話しですね。
◆何の変哲もない黒豆甘納豆に、「ゴリラの鼻くそ」とネーミングをして各地の動物園や遊園地で売る、ここに、「リフレーミング」というカウンセリングの技法の原型があります。田舎の小さなお店で、売っている甘納豆を、動物園で「ゴリラの鼻くそ」という名前で売る。これだけで、買う人にとって、同じ甘納豆でも、意味が全く違ってくるのです。動物園に行って、「ゴリラの鼻くそを買ってきた」と言えば、ちょっとしたジョークになり、また、動物園に行ったちょうど良いお土産になり、また、話が弾む。なかなかユーモアのあるネーミングだと思いました。
◆リフレーミングとは、簡単に言うと、見方を変えるということです。難しい言葉で定義すると、「今までの考えとは違った角度から考えたり、視点を変えたりして、意図的に自分や相手の生き方を健全なものにし、積極的なものにしていくこと」となりますが、要は見方を変えるということです。例えば、この絵を見てください。ここに描かれているのは、若い女性でしょうか。おばあさんでしょうか?見方を変えると、そのどちらにも見えるのです。横を向いたネックレスをした女性のあごの部分が鼻で、ネックレスの部分が口、耳の部分が目だと見ると、同じ絵が、おばあさんの絵に見えるから不思議です。次のこの絵はどうでしょうか。何が書いてあるかわかるでしょうか。訳の分からないめちゃくちゃな模様ですね。でも、紺色の地の部分に、灰色の文字が書いてあるとみるので、訳が分からなくなるのです。灰色の地に、紺色の文字が書いてあると見ると、「ライフ(LIFE)」という英語が浮かび上がってきます。
◆私たちは、ひとつの見方、ひとつの視点からだけ物事を見ていては、本当に、物事を見ている事にはならないのです。多角的なものの見方を学ぶ必要があります。三つのものの見方をお勧めしたいと思います。①神様の視点で。私たちは、いつも、「私」という物差しでものを見ています。でも、神様の視点でものを見たら、ずいぶん違って見えるのではないでしょうか。②ほかの人の目で。他の人の目で見てもらう。あるいは、他人の意見を聞いてみるということは大切ではないでしょうか。③ユーモアのセンスで。椎名麟三という作家は、ある時、電報為替を受け取るために、郵便局へ行きました。ところが、窓口で、本人確認の証拠となる米穀通帳を見せてくださいと言われました。でも、旅先です。カバンの中をひっくり返して、身分証明書になりそうな、印鑑や名刺などを出しながら、必死に、「椎名麟三はわたくしです。」と自分の鼻を指さしている自分の姿に気づき、滑稽に思えたというのです。このような、自分を第三者の目で見て笑うことのできる心の余裕をもって、ものを見るということが大切ではないでしょうか。
「神を愛する人たち、すなわち、神のご計画にしたがって召された人たちのためには、すべてのことがともに働いて益となることを、私たちは知っています。」
新約聖書(新改訳聖書2017)ローマ人への手紙8:28